採用を強化する為のHRマーケティングの取り組み方
近年、採用業界は「”超”売り手市場」になっています。
働き方が多様化し、終身雇用を求める声も減り、転職は当たり前となり、その影響で企業は人材不足、欲しい人が採用できないなどの課題に直面しています。
そういった背景から中小企業が採用を成功させるために、HRにマーケティング思考を取り入れた運用が注目されてきています。
本記事では、中小企業が採用を成功させるためのHRマーケティングの取り組み方について紹介します。
本記事はこのような人の参考になります!
- 自社の組織構築において採用活動を検討をしている方
- 中小企業で採用がうまく回っていない方
- HRマーケティングについて知りたい方
目次
HRマーケティングについて
HRマーケティングとは、企業が採用活動から入社後のオンボーディングなどのHRの一連のプロセスにおいて、マーケティングで活用される考え方やフレームワークを活用し、成功させることを指します。
その中でも一番肝となるのは採用となります。
HRマーケティングは、売り手市場により採用コストも高騰し、大企業に比べるとより厳しい中小企業が勝つために必要な考え方です。
HRマーケティングをうまく活用し、優秀な人材を確保するだけではなく、自社の魅力を確認しながら、定着率を高めるきっかけを作っていきましょう。
採用戦略におけるマーケティングのポイント
商品やサービスの販売において、マーケティング戦略を立て、WEB広告やSNSを駆使しながら集客することは、多くの業界で当たり前になってきています。
採用においても全く同じで、採用のマーケティング戦略を立てWEB広告やSNSを活用しながらPDCAを回していく事が重要です。
その上でゴールを定め、WHO、WHAT、HOWの流れで採用戦略を決めていきましょう。
採用ブランディングとマーケティングのフレームワークで考える
採用(商品やサービスにおいて)のブランディングをしていく上でよくある順番は下記になります。
- ペルソナ設計
- コンセプトの確定
- 提供価値の定義
- 認知の獲得
- 結果の検証
中小企業の場合、実際にこのプロセスで検討していくケースもありますが、大手と違って予算もリソースも限られている事が多いので、上記のプロセスだと難しい面もあります。
そこで中小企業の場合は順番を逆にした考え方の方が有効です。
- ペルソナ設計
- 認知の獲得
- アクションからの検証
- 提供価値の定義
- コンセプトの確定
- 中小企業の採用において、コンセプトも重要ですが、数名の採用を確保するために順番通りにしてしまうとハードルが上がりスピード感がなくなるなどのデメリットが出てきやすいです。
それよりもまずはペルソナを決めたらすぐに認知を獲得し、それからPDCAを回すほうが採用に繋がりやすくなります。
それ以外に、採用においては3C分析を使用することもおすすめです。
動画でも紹介しているように、3C分析とは、Competitor(競合)、Company(自社)、Customer(顧客)、の3つの視点から分析するフレームワークとなります。
採用において、競合相手はどこかを決めていない中小企業の経営者の方もいらっしゃいますが、候補者の方は必ずどこかと比較検討をするので、競合を明確にすることは大事です。
パイは決まっており、且つ売り手市場なので、どのフィールドから候補者を獲得していくのかという視点を持つことを意識していきましょう。
また必ずしも業種が同じところが競合とも限りません。
実際に例えば、広告代理店の営業職の場合、候補者の方が比較検討される企業は同じ広告代理店の他社だけではなく、事業会社側のマーケティング担当職であったり、コンサルティング会社のコンサル職などの業種が競合となってくるケースも多いです。
そういった候補者が比較検討してる企業、つまり競合相手を理解した上で戦略を組み施策を打っていくのと、何も明確にせずに動いていくのでは結果は大きく異なります。
3C分析の活用の仕方については下記の記事も参考になります。
現場の整理から目標の整理
採用において、自社が何で成功し、何でつまづいているのかこの2点を理解した上で、目標までのマイルストーンを構築していきましょう。
採用プロセスを大きく2つに分解すると、候補者の認知から集客のところと、実際にオファーを出し承諾してもらうところに分けられます。
その2つの採用プロセスの軸から成功しているところと失敗しているところのそれぞれの要因を書き出していくと、よりギャップに対しての解決策の検討が進められます。
例えば、採用ページまではアクセスが担保できているが、実際に応募までのアクションが少なければ採用ページのコンテンツが人材確保につながっていないという課題が判明します。
またその中でも条件面の応募要項のコンテンツは見られているが、社員の現場インタビューのコンテンツはあまり見られていないなどがわかればどのコンテンツを強化し、改善する必要があるのかがわかります。
また実際に入社をして活躍されている方、アンマッチで退職された方などの傾向を分析することも重要です。
例えば、実際に即戦力になるようなスキルがある人材が欲しいと考えていたとしても、過去の即戦力人材がその後すぐにまたキャリアアップで転職をし、定着率が高くない場合、社内でのキャリアロードを従業員に明示できる体制などが課題とわかります。
もしくは新卒入社の方が成長して活躍している様な環境であれば、採用が難しい即戦力人材ではなく第二新卒に絞って採用を展開するというのも選択としてはありでしょう。
逆に第二新卒や若手があまり活躍せずに退職する傾向が高いとわかれば、入社後のオンボーディングに課題があるなどが判明します。
今いる従業員や過去の退職傾向を見て分析することで採用戦略をよくすることができます。
上記がわかれば、入社をひとまずのゴールと設定したとしても、それに至るまでの小さな目標のKPIが設定でき、歩留まりがどこか判別しやすくなることにより運用のブラッシュアップが進むでしょう。
ペルソナの設計をしてユーザー目線を考える
採用戦略を決めていくにあたり、ペルソナの設計は早急にしていく必要があります。
集まった応募者の中から良さそうな人をピックするのではなく、予め求める人物像を定義し、それに合致する人を集めるという考え方です。
一言で言えば優秀な人材となるかもしれませんが、会社によっても会社のステージによっても優秀の定義は変わってくるのでその都度定義付けをするべきです。
また先ほどもお伝えしましたが、ペルソナ設計においては、現在活躍されている方、退職されている方などの情報からもどういった人材が今の会社に適しているのかが見えてきたりします。
採用戦略とはいえ、採用手法だけに限らず、その後のオンボーディングにも連携する話です。
定着率やエンゲージを考えるとなると、人事に限らず現場の体制なども見ながら、しっかりと理解した上でペルソナを固めていくことが重要です。
ペルソナの作り方については下記の記事が参考になります。
ペルソナ(誰に)の設計が出来れば、自社のメッセージをどう届けていくかを考えることができ、その上で候補者がどういった動きを取るのかを検討でき、適切なアプローチ方法が明確になります。
データ分析に基づく採用活動
最後のポイントとしては、これまで決めてきたことで、より定量的な検証が可能となります。
実際にペルソナがはっきり決まれば、そもそもの候補者のパイも可視化できます。
そこから逆算をしながらどれくらい打ち手が必要なのか、エリアを拡げる必要があるかなどのジャッジをしていきましょう。
例えば、一人を採用するに当たってどれくらいの人にリーチし、どれくらいの数のサイト流入数を獲得し、説明会や面談、面接を設定し、内定が出るのか、その率からペルソナに対しての母数を確保する為に何を改善すべきかや、やるべきことが見えてくるでしょう。
数値を軸にした採用戦略・施策の活用により、成功の率を高めていきましょう。
HRマーケティングにおいての具体的な採用施策
ここまでHRマーケティングの骨子となるポイントなどはご紹介しましたが、実際にどういった採用施策をすればいいのかをいくつか紹介します。
自社HPと採用ブランディング
採用ブランディングにおいて外せないのが自社の採用ホームページです。
少し前までの定番だった人材情報のポータルサイトで発信するだけでは非常に弱いです。
またそういった広告サイトは、検索上位に表示をさせるには費用をオプションで載せていく必要性があり、予算が限られている中小企業にはあまり向いていない施策となります。
一方で、自社サイトであれば、好きなだけページを作り情報を載せることもできますし、ポータルサイトのようなフォーマット化もされていないので差別化した見せ方が可能です。
候補者は事前に企業のホームページを見る人が多いのも見逃せない要因です。またindeedの存在も無視することはできません。
indeedは求人特化の検索エンジンですが、ここの検索結果で自社の採用ホームページを表示させることができます。
採用ブランディングにおいて、求人の検索エンジンに表示されることは大きな意味を持ちます。
仮にまだ、採用ホームページに着手ができていない状態でしたらまずはここから押さえていきましょう。
オウンドメディアの活用
自社の採用ホームページに近い話ですが、採用に特化したオウンドメディアを運用することも非常に有効な施策となります。
採用のオウンドメディアは、自社の採用活動に関するコンテンツを発信するWEBサイトになります。
例えば、ナイル社が展開している採用オウンドメディア「ナイルのかだん」では、「人」「事業」「組織」「カルチャー」「お知らせ」などカテゴリーを作り、社員インタビューを中心に豊富な記事を展開しています。
そしてペルソナ別にランディングページを設けて、候補者が自分のポジションを見つけられるようにPDCAを回しながら発信をしています。
また最近では「note」や「wantedly」などのプラットフォームを活用したオウンドメディアも流行しています。
これらのメディアを活用することで、自社の魅力や採用情報を積極的に発信し、候補者の興味や関心を引きつけることが可能です。
オウンドメディアの活用は採用ブランディングの構築にも寄与します。また求職者の情報収集や応募前のスクリーニングなど、採用プロセスの効率化にも繋がります。
但し、運用にかかるリソースは決して少なくないので現状のバランスを見ながら検討してみることが良いでしょう。
オウンドメディアを活用したリクルーティングについては下記の記事が参考になります。
ダイレクトリクルーティングの活用
攻めの採用の一つとして、DR(ダイレクトリクルーティング)があります。
企業が転職希望者などに直接アプローチする採用手法のことです。
代表的ツールとしては「ビズリーチ」、「wantedly」、「Linkedin」などが挙げられます。
ダイレクトリクルーティングのメリットとしては、自社が必要とするスキルや経験を持った候補者を直接スカウトが出来たり、通常の広告施策と比べて自社で運用する分、費用が安いのでコストを抑えることできるなどのメリットがあります。
例えば、ベンチャー企業の株式会社Anotherworksでは「wantedly」を活用してダイレクトリクルーティングを展開しています。
自社が採用したいベンチャーマインドが強い候補者やスタートアップに興味を持っている方などが登録ユーザーとして多いこともあり、ペルソナに合った採用を実現しやすいです。
また費用も定額制とスカウトの従量課金で発生しますが、エージェント(手数料30〜40%)などに比べると運用次第で割安に獲得できるのもメリットになります。
因みに、wantedlyはオウンドメディアとしても活用ができることを考えると、一石二鳥でコスパがいいおすすめのダイレクトリクルーティングのサービスとなります。
SNSの活用
動画でご紹介した通り、求人媒体だけでは限界がある中で、それをブーストする役割として「Twitter」や「Facebook」などのSNSは有効な手段となります。
またSNSはファンを醸成することにも適しており、情報に触れてもらうきっかけを作るチャンスにもなります。
そしてSNSはアカウント運用だけではなく、SNSでの広告展開も実は非常に有効となります。
一般的にSNS広告は採用というよりは商品やサービスの広告のイメージがあるかと思いますが、採用広告としての発信も適しています。
配信ターゲットの設定から各SNSのプラットフォームによっても特徴が違うのでうまく活用し、自社の採用サイトに導線を引いていきましょう。
まとめ
今回は売り手市場と呼ばれるHR領域の中で、採用を成功させる為に必要なHRマーケティングについてご紹介させて頂きました。
中小企業が大企業に勝つ為には、間違いなく採用戦略をちゃんと立てることが重要です。
その為に改めてマーケティング思考を取り入れ、良い人材を採用できるように運用してみてはいかがでしょうか。