海外でリスティング広告を成功させる|国内向けとの違いや注意事項について
デジタル広告としてバナー広告や動画広告と並び、大きなシェアを占めるリスティング広告。
海外向けの集客ツールとして注目度の高い媒体ですが、国内向けと比較して導入までのハードルの高さを感じていませんか。
海外向けにリスティング広告の運用を開始する場合、国内向けの場合と違う部分で注意すべきこと、事前準備が必要なことがあります。
本記事では海外向けにリスティング広告を開始したい方向けに、導入に当たっての注意事項や手順、また成功事例についてご紹介します。
目次
リスティング広告|国内向けと海外向けの違い
ターゲットが日本国内であっても海外向けであっても、リスティング広告の仕組み自体に変わりはありません。
一方で設定方法やクリエイティブの作り方などは、国内向けと海外向けで勝手が違うところがあります。
国内向けと変わらない点
リスティング広告を配信できる媒体として大きなシェアを誇るGoogle広告の場合、設定方法やターゲティングの仕組みは国内、海外で違いはありません。
リスティング広告におけるクリエイティブの文字制限等も海外国内で変わりませんが、言語が変わる場合(例えば英語を使用する場合)は同じ内容だと文字数が長くなってしまう傾向にあり、見出しや説明文の文字制限におさまらなくなる可能性があるため注意が必要です。
▼Googleリスティング広告のクリエイティブ文字数
広告見出し | 半角30文字(全角15文字) |
---|---|
広告説明文 | 半角90文字(全角45文字) |
海外向けリスティング広告成功のポイント
リスティング広告は、ユーザーの検索行動に紐づいて配信される広告です。
そのため海外でリスティング広告を成功させるためには、それぞれの国によって検索事情や言語の違いがあり、配信先の状況を深く理解する必要があります。
適切な媒体を選択する
ターゲットとする国や地域により検索エンジンのシェアは大きく異なるため、広告配信に適切な媒体も国ごとに違いがあります。
広告は検索エンジンごとに配信することが多く、シェアの大きな媒体を選択して広告を出すことで、より多くのユーザーにリーチすることに繋がります。
ターゲットとなる国の検索習慣を理解する
競合他社の広告を分析する
上位に表示されている広告は、ターゲティングやクリエイティブなど入念な調査の上で出稿されていると考えられます。
リスティング広告の見出しには、キーワードとして指定している語が含まれていることが多く、広告見出しを確認することで他社がどんなキーワードで出稿しているのか予測しやすくなります。
出稿するキーワードが決まったら、現地のIPアドレスを使用して自ら検索を行い、どんなリスティング広告が出稿されているのか確認しましょう。
通常広告のターゲットが日本になっていない場合、ターゲティングの設定から日本が除外されているため、日本からキーワードを検索しても広告が表示されません。
そのため海外からの広告の見え方を確認するには海外のIPアドレスを使って検索することで「海外から検索している」形をとります。
海外のIPアドレスを使って検索する場合、VPN接続を利用するのがおすすめです。
VPNを利用することで、通信の安全性を確保しながらIPアドレスを利用したい国のものに変更することができます。
以前はVPNの利用料は一般的に高額でしたが、現在は数百円から利用可能となっています。
また中には無料のVPNサービスも存在しますが、安全性が保証されていないので有料のものを利用することをおすすめします。
キャンペーン作成の注意事項
国別でキャンペーンを作成する
下調べができたら、キャンペーンの構成を検討します。
配信する国数が多くない場合は、できるだけ国別に分けて広告セットを作成することをおすすめします。
国別でキーワードの検索ボリュームを確認すると、同じ英語圏であってもアメリカとイギリスでは違いが多く見えてきます。
同じ意味を指す言葉であっても国によって単語が違うことも多く、指定するべきキーワードにも違いがあることが多々あります。
またランディングページやCTRの高いクリエイティブにも違いがみられることがあり、国ごとに分けて運用することで全体の獲得単価を引き下げ、効率の良い配信に繋がります。
キーワード、クリエイティブはネイティブの確認を入れる
リスティング広告の見出しや説明文に言語的な違和感が少しでもあると、CTRは大幅に下がります。
言語に間違いがあると管理がされていない「怪しいサイト感」が出てしまい、ユーザーからの信用度が低下します。
拙い日本語の見出しで広告が出されていたら、クリックするのを避けようとは思いませんか?
国内のクリエイティブを無理に翻訳して転用しようすると、文字数でひっかかったり訴求が正確に伝わらないなどの問題にぶつかることがあります。
近年Deeplなど、精度の高い翻訳サービスが広がりましたが、100%違和感のない見出しを作成するためには翻訳サイトでは不十分です。
出稿前にネイティブの確認を入れることで、不要なCTRの下落を防止することに繋がります。
配信後の調整はこまめに
広告配信開始後は、国内の広告配信と同様にこまめな状況確認とチューニングが必要です。
CTRは想定通りか、悪い場合は何が原因なのか、CPAは目標内におさまっているのかなど確認し、必要に応じてクリエイティブやLPの調整を行いましょう。
また配信先の国事情の理解不足から分析に見落としが起きないよう、ここでもネイティブ同席の上で分析することが望ましいです。
国内向けの配信の感覚のままで海外向けに配信を行うと、思わぬことが原因で失敗を招く可能性があります。
例えば広告クリエイティブの画像や文字サイズについて、日本で受けの良いクリエイティブに比べて、海外配信では「より文字が大きく、わかりやすいデザイン」のクリエイティブの方が高いCTRがでることがあります。
配信していた当時はこの明確な原因がわかりませんでしたが、事後の調査で「ターゲットとした中南米の国では単価の高いスマートフォンの普及率が低く、画面が割れた状態で使用されている確率が日本よりも高い」ことがわかりました。
完全な状態ではないスマートフォンでも見やすい、視認性の高いクリエイティブが好まれたと考えられます。
CTRが高いクリエイティブ、低いクリエイティブを比較し、何が原因でクリック率に違いがでているのか広い視点で検討しましょう。
購入をCV地点として置いている場合、各国における決済事情についても正確に把握する必要があります。
オンラインショッピングの決済方法として日本ではクレジットカードが人気ですが、他国ではそもそもクレジットカードの普及率が低いなど、日本ほど一般的に使われていないことがあります。
決済方法としてクレジットカードだけを指定することで、せっかく広告に興味を持ったユーザーがサイトを離れてしまっている可能性があるのです。
このような場合、該当の国で一般的な後払いサービスやプリペイドカードなどに決済方法の幅を広げることで、CVRが大幅に改善したこともあります。
配信後、思うように配信が進んでいない場合は、その国特有の事情の影響を受けていないか、現地の事情に詳しい人とともに確認を行いましょう。
海外向け広告媒体と各国のリスティング広告事情
基本的には全世界にユーザーを誇るGoogle広告が圧倒的なシェアを誇りますが、中国など一部地域ではGoogleが使用できないので注意が必要です。
国ごとの検索媒体シェアや検索習慣の特徴を十分に研究し、広告配信の準備を整えましょう。
各種広告媒体のシェア
日本、欧米、中国、韓国それぞれの国ごとに検索エンジンのシェアには違いがみられます。
■日本の検索エンジンシェア
国内ではGoogleとYahoo!が検索エンジンとして大きなシェアを占めており、日本国内向けにリスティング広告を出す場合、Google広告とYahoo!広告を活用することで大半の人にリーチすることが可能と考えられます。
■アメリカの検索エンジンシェア
アメリカではGoogleのシェアは日本よりもさらに高く、続いてBing、Yahoo!の順となっています。
Googleのシェアが圧倒的なので、アメリカ向きのリスティング広告配信を行う場合はGoogle広告のみの活用でも問題はないでしょう。
■中国の検索エンジンシェア
Googleが禁止されている中国の場合、検索事情は他国と大きく異なります。
中国の検索エンジン、百度(Baido)がシェアの70%弱を占めており、Googleはわずかに2.5%です。
中国にリスティング広告を出す場合、まず検討したいのは百度広告と言えるでしょう。
■韓国の検索エンジンシェア
隣国韓国も検索事情について特徴的な部分がみられます。
Googleのシェアが70%近いところは日本とも似ていますが、二番手に「NAVER」が来ています。
近年徐々にGoogleがシェアを伸ばしてきていますが、韓国国内ではいまだに強い人気を持つ検索エンジンです。
このように、各国で使われている検索エンジンの種類は大きく異なります。
なるべくシェアの大きい媒体で広告を出すことで多くのユーザーにリーチできます。
国ごとの検索習慣の特色
日本、欧米、中国、韓国それぞれの検索習慣(検索窓へのキーワードの打ち込み方)にも違いがみられます。
■日本の場合
複数の単語(キーワード)を組み合わせて検索する傾向がみられます。
例えば北海道に旅行にいくため、人気の観光スポットを知りたい場合、下記のような検索ワードが想定されます。
- 北海道 観光地
- 北海道 観光地 ランキング
- 北海道 人気 観光地
日本語は単語の組み合わせでもおおよそ意味が通じるため、このように検索される習性があるのだと考えられます。
■アメリカの場合(英語)
日本語と違い、英語の場合単語の組み合わせで検索されることは少なく、フレーズの形で検索される場合がほとんどです。
完全な文章を打つのは手間ですが、最低限意味が通じるギリギリのフレーズで検索するイメージです。
同じく北海道の観光地を探している場合、英語だと下記のような検索が想定されます。
- what to see in Hokkaido(北海道で何をみるべきか)
- sightseeing in Hokkaido(北海道の観光地)
- things to do in Hokkaido(北海道でやるべきこと)
■中国の場合(中国語)
中国語は漢字を使用するため、日本と同じように漢字の単語を複数組み合わせて検索する傾向がみられますが、中国では単語を組み合わせる際に単語と単語の間にスペースを挟みません。
日本だと「北海道 観光」と検索されますが、中国語だと「北海道旅游」となります。他にも下記のようなキーワードで検索されています。
- 北海旅游必去十大景点(北海道観光名所トップ10)
- 北海道旅游攻略自由行(ツアーでない場合の北海道旅行攻略)
■韓国の場合(韓国語)
韓国で主流の検索エンジンといえばNAVERです。
この検索エンジンは検索結果の表示のされ方にも特徴があり、検索した際に最上位にリスティング広告、その下には「カテゴリ」と呼ばれるジャンルごとに検索に関連する情報が表示されるという仕組みになっています。
カテゴリーにはブログ、知識IN(Yahoo!知恵袋のようなサービス)、NEVERショッピング、NEVERカフェ(掲示板のようなサービス)、その他一般サイトなどがあり、その数は30を超えます。
検索ワードにより表示されるカテゴリーは変わります。
欧米向けならGoogle、中国は百度
各国の検索エンジン事情について紹介しましたが、世界全体の傾向でみた場合、Googleが圧倒的なシェアを占めていることは間違いありません。
この状況を踏まえて、海外向けのリスティング広告を配信する場合、まず取り組むべき広告媒体はGoogle広告と言えるでしょう。
ただし、中国だけはGoogleが禁止されているため例外で、中国に対してリスティング広告を検討するなら百度がおすすめです。
成功事例と具体例
海外の会社におけるリスティング広告の活用事例と、日本企業による海外向け配信例をご紹介します。
海外におけるリスティング広告の可能性は無限大です。
ぜひ成功例を参考に、海外向けの広告配信を検討してみましょう。
海外向けリスティング広告配信の例
インバウンド向けの飲食店の場合
インバウンド向けの飲食店の場合、海外からの観光客数の多い国をターゲットとして広告配信を行います。
コロナ禍以前の日本を訪れる観光客数が多い国は、一位が中国、二位が韓国、三位が台湾、四位が香港、五位がアメリカという状況でした。
この場合、全体がカバーできるGoogleに加え、中国向きに百度、韓国向けにNAVERを活用し広告を出すのが適切でしょう。
この飲食店が北海道札幌市にある場合、キーワードとして地名を入れることはもちろん、日本語が使えない観光客が安心して来店できるよう「英語(中国語、韓国語)対応可」「本場の味」などを見出しに盛り込むことで高いクリック率が期待できます。
リスティング広告配信事例:伝統工芸品海外販売の場合
海外に向けてものを販売したい場合、前提として海外から安心して購入できるECサイトやページをもっておくことが重要です。
ターゲットユーザーの言語で、現地の決済システムでストレスなく買い物ができる環境が整っていないと、いくら広告を配信しても購入に繋がらない可能性があります。
アメリカならAmazonやEtsy、Ebayなど、中国ならAlibabaなど現地に馴染みのあるECサイトを経由して販売できるようにするのがおすすめです。
伝統工芸品は、日本語がそのまま海外で流通していることが多く、着物→KIMONO、有田焼→ARITAYAKI など、詳しい人ほど日本語でそのまま検索します。
この商品に辿り着きたいユーザーがどんなワードで検索するのか調査し、見出しに盛り込みましょう。
また、海外からの購入の場合、ユーザーにとって大切なのが「送料」など、配送周りの対応についてです。
初回配送料無料キャンペーンなど、ユーザーにとって大きな魅力になるので、見出しや説明文でしっかり伝えることでCVRの向上が見込めます。
海外向けリスティング広告事例
日本の旅行会社:外国人旅行者の取り込みにGoogle広告を活用
北海道アクセスネットワーク株式会社では、国内向けのリスティング広告運用開始以降、キーワードや見出しの改善を重ねることで、広告配信開始当初からクリック率を3倍以上、コンバージョン率を4倍以上に改善することに成功しました。
このノウハウを生かし、現在は海外からのインバウンド需要を効率よく取り込むためにGoogle広告を活用しています。
まず英語圏をターゲットとしてGoogle広告の配信を開始し、後々は中国、韓国へもターゲットを広げる想定です。
Google広告はターゲットを変更するだけで簡単に海外向けの広告出稿も可能なので、国内向けの広告配信で培ったノウハウを生かし、初めての海外向け広告出稿に挑戦するのには最適な媒体と言えます。
百度リスティング活用事例
インタセクト・コミュニケーションズ株式会社では、百度広告を活用して中国圏での広告成果獲得の成果をあげています。
成功のためのこだわりは徹底した市場調査で、年代や収入、さらには使用言語(広東語、北京語、上海語)などの幅が広い中国において、ターゲットとするユーザーについての深い情報収集に基づいたキーワードや広告クリエイティブの改善は欠かせません。
ある金融機関のリスティング広告運用では、リスティング広告に限らず百度アドネットワーク広告なども併せて活用することで、当初高く出ていたCPAを1/5までに削減することに成功しています。
日本国内からの広告出稿でも、現地の文化や習慣の調査をしっかり行うことで広告を活用して成果をあげることは可能なのです。
まとめ
海外市場でリスティング広告を成功させるための方法についてご紹介しました。
国内向けのリスティング広告ノウハウを持っていらっしゃる場合でも、言語や事情が異なる海外で広告配信を軌道に乗せるのに苦労されることはよくあります。
特にGoogle広告は配信先のターゲティングを変更するだけで設定的には手軽に海外向けの出稿が可能な分、配信開始まではスムーズに行きやすいのですが、その国の特性を理解しないまま配信を行ってしまうと「国内と比較してCPAが高騰してしまう」「CTRが全く上がらない」など、配信開始後に多くの問題に直面しやすいです。
本記事を参考に改めて媒体や配信設定を精査し、改善に役立てていただければ幸いです。